空色のパノラマ

空色のパノラマ

なにげない毎日の中にひっそり佇むささやかで見落とされがちな奇跡を、X100Fとクラシッククロームで綴る日記。

ブルージャイアントを見て感じたこと。初期衝動。好きでいること。夢中で居続けること。



※撮影2023年11月。諏訪湖、会社、庭、自宅。
  カメラ:X100F。フィルムシミュレーション:クラシッククローム。
  絞り優先モード、WB:晴天/R:-3/B:-2、ハイライト0、シャドウ:-1、カラー:-1、
  DR:100、NR:-4、シャープネス:0、グレインエフェクト:弱。

先日、ブルージャイアントという映画を見ました。
(具体的ではないですがネタバレ注意です)

ジャズに魅せられた若者三人がバンド(あれ、ジャズもバンドっていうんだっけ?)を
組んで成長していく物語です。筋立てはとてもシンプル。
ジャズ自体、何枚かCDを持っていますし、基本的な歴史も知ってはいますがそこまで
親しんでいる訳ではないので、劇中の演奏が専門家的に良かったかどうかは分かりませんが
見ていて、聴いていてとてもかっこよかったし、すごく感動的でした。
そして、それ以上に惹かれたのが、三人ともに自分の夢や好きに向かってひたすらに、
ただひたすらに打ち込む姿、挫折を乗り越えていく様、そういうのがいいなぁと。

主人公のテナーサックス奏者はとにかく最初からジャズに夢中。
ひたすらにひたむきにストイックに毎日欠かさず独りで練習を続けていましたが、
おそらく本人はそれをストイックとも頑張っているとも思わず、ただただ自分の好きな
ことに夢中で、自分の中にあるエモーショナルな感情を吐き出し続ける。
最初から最後までそのように走り続けていて、この主人公自身は壁らしい壁にも当たらず、次々と階段を駆け上がっていきます。(タイプでいうと大空翼?古い)
とてもいい奴だけど実は結構厳しくときに冷たく、でも本当の意味で仲間思い。

もう一人は、若くして類まれなテクニックを持つピアノ奏者。
それ故に周りを見下しがちで、世の中のジャズ奏者のレベルの低さを嘆き、確かな技術と
完成度にこだわり続けてきた結果、最初に自分がもっていた音楽を楽しんでいた人への
憧れ、音楽自身へ憧れ、人とのつながり、温かい記憶、そういった初期の気持ちをいつの
間にか自分の中に知らず知らずに閉じ込めてしまって、自分自身を表現できなくなって
しまっていました。そのことを苦しみ、しかしそこを乗り越えて自分自身を表現していく。
仲間や周囲に感謝することを覚えていく。

完全に素人だった最後の一人、何気なくやったドラムを通じて、とても下手で単純な
演奏だったけど、そこで初めて自分の生きがい、打ち込めること、仲間と作り上げることを見つけて、他の二人、自分から見たらレベルが段違いの二人と一緒に演奏できるように
一生懸命ひたむきに、ただひたすらに努力をし続ける。
ずっとずっと自分が足を引っ張っていると感じていたけど、あるときに自分のファンに
声をかけられ励まされたことにに感激し、やがて最後には、失敗しない演奏ではなく、
思いっきり自由に、音楽そのものと一体化するような演奏をするまでに成長しました。

最後にたどり着く境地は一緒なんですが、そこまでの道のりが結構違っていること。
そしてたどり着いた瞬間、達成と同時にバンドは解散、さらに大きく羽ばたいていく
主人公と、別の道を歩みだす二人、という現実。
さわやかな中にも厳しさがあり、厳しさの中にも友情があり、前向きな気持ちになる
いい映画だなぁと思いました。

後から考えて面白いなと思ったのが、先に書いたように三人の状況が違っていて、
感じ方や立ちふさがる壁も違っていて、そして成長の様子が違っていることでした。
特に主人公とピアニストの対比が興味深いなぁと。いつの間にかテクニックで武装して
己をさらけ出せなくなっていたのと、どれだけ上達してもそれ以上にずっと己をさらけ
出し続けていたのと。

それでふと感じたのが、これってどんなことにも言えることだなということでした。
カメラも、最初は何もわからずに、シャッターを押してそこに自分が見た物が写ることが
うれしくて、ただただそのことがうれしくてシャッターを押しまくっていたあの頃。
だんだん知識も増え、撮り方を覚え、経験を重ねて、シチュエーションごとに適切な
撮り方ができるようになっていくにつれて、いつの間にか間違いのない写真という方向に
いきがちになっちゃうかもなー、っていう。

だからこそ、以前も書いたことですが、どんな写真が出来上がるかじゃなくて、撮りたい
という衝動に従って、セオリーなんて度外視で、自分にはこう見えているんだ、こう残し
たいんだ、っていう自己満足で独りよがりを貫きたいと改めて思いました。
(その状態でさらにさらに高みに登ればもっと多くの人の目に留まるんでしょうが、
 そこを目指すのではなく、自分の撮りたい、自分の衝動、をもっともっと突き詰めて
 いきたいと思いました。ありがたいことに今のこんな未熟な写真でも見てくれる
 人もいますし。感謝感謝です)