空色のパノラマ

空色のパノラマ

なにげない毎日の中にひっそり佇むささやかで見落とされがちな奇跡を、X100Fとクラシッククロームで綴る日記。

万年筆で字を書くときの、紙とペン先とインクの感触を感じられるスピードで。

※撮影:2022年11月。諏訪湖、自宅。カメラ:X100F/クラシッククローム。

先日、会社で万年筆のインクを補充していたら、ちょうど最後にペン先をティッシュで
拭いているタイミングで問い合わせの電話がかかってきて、慌てて作業を終わらせたら
その後、万年筆でうまく字が書けなくなってしまいました。
インクフロー(インクの出具合)がイマイチになって、掠れるようになってしまって。
慌ててやったからだと後悔しながら、いろいろと試してみて、数日経ってようやく
インクフローがある程度回復しました。
(完全には・・・・そしてどうやらティッシュの繊維が挟まってしまっていたようで)

完全ではないにしろ、復活した万年筆で手帳に字を書くと、その書き味の良さをまた
味わえるようになって、その感触を味わいながらいろんなことを思いました。

まずはやっぱりいろんなことは当たり前ではないということ。こうやって万年筆で気持ち
よく字を書けることだってありがたいことだということ。そういうありがたさをすぐ自分は
忘れちゃうな、と。
そして、やっぱり慌てて物事に当たっていたな、と。だから今回のことを引き起こして
しまったわけで。
そして、この気持ちよさ・・・ペン先が紙を捉えて、でもそこにひっかかりというよりは
氷の上で気持ちよく滑っているようななめらかさがあって、その滑りの後には気持ちのいい
インクの色が続いてくる・・・を最近全然感じていなかったな、と。

ここ数年はずっとそうなんですが、元々二人でやっていた仕事を人が少なくなったせいで
一時的に一人でやっていて、というのがいつの間にやら常態化していて、単純に二人で
やる仕事をこなすためにとにかく駆け足、立ち止まったりする暇もなく、次々とやっつける
日々が続いていました。
そんな中にも緩急をつけたり、気持ちの充実は味わっていたものの、でもやっぱり急いで
いたなぁと。
先へ先へ、とにかく先へ先へ。

そもそも、万年筆は仕事で使うにはとても不便な道具です。
キャップを外して使って、使ったらすぐキャップを戻さないとインクが固まってしまうし、
インクもボールペーンのようにすぐ乾いているわけではなく、紙の上でワンテンポ乾くまで
時間があります。
それでも、万年筆で字を書く感触を一度味わってしまうとなかなかボールペンには戻れ
ない。せっかくなら仕事中だってこの気持ちよさを味わいながらやりたい。
そう思って使っているのに、最近は全然味わえてなくて、ただただ急ぐばかりになっていた
な、と。

やっぱり今回のことは自分にとっての戒めというか、気付きの機会だと思いました。
これからも、あるいはこれからの方が、もっともっと忙しい日々になっていきますが、
それでも、万年筆の感触とその喜びを感じられるスピードで仕事をしていきたいなと
思いました。