空色のパノラマ

空色のパノラマ

なにげない毎日の中にひっそり佇むささやかで見落とされがちな奇跡を、X100Fとクラシッククロームで綴る日記。

奇跡も語る者がいなければ

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 「娘よ、ものはいつもそのふたつの目で見るように、ものはいつもそのふたつの
 耳で聴くようにしなければいけない。
 この世界はとても大きくて、気をつけていないと気づかずに終わってしまう
 ものが、たくさん、たくさんある」

「奇跡のように素晴らしいことはいつでもあって、みんなの目の前にいつでもあって、
 でも人間の目には、太陽を隠す雲みたいなものがかかっていて、その素晴らしい
 ものを素晴らしいものとして見なければ、人間の生活はそのぶん色が薄くなって、
 貧しいものになってしまう」

「奇跡も語る者がいなければ、どうしてそれを奇跡と呼ぶことができるだろう」

 

allreviews.jp




ジョン・マグレガーのこの小説は、ある通りに面した一つながりの住宅の前で
夕方起きた事故、その日の朝からの一日を、たくさんの住人の様子を描いています。
いろんな住人の、なんてことない行動、普通の行動、生活、いら立ち、ちょっとした
トラブル、戸惑い、迷い・・・
淡々と描かれているその様子が、読み進めていくうちにそれぞれの住人の気持ちや
心が見えてきて、そしてそこにはとても美しい思いや他人を思いやる気持ち、
つまり本当の意味での暮らしが見えてきたところで悲劇的な事故が語られだします。

その直前、妻を火事で亡くし両腕の大やけどに今でも苦しんでいる父親が、
残された幼い娘に語った言葉です。

ああ。
ああ。
ああ。

何度もため息をついて、そしてはじめは意味不明の行動に(他人の行動は意図が
分からないと実に意味不明に映る!!)意味が分かってくるにつれて親しみと
愛着がわいてきていた住人がとてもいとおしくなり、だからこその事故が重く
のしかかってきて。

最後に一つだけ、誰にも知られない奇跡が起こります。
それが話しの中でどういう意味を持つのか、それは果たして、いいことだけど
でもすべてにおいていいことだったのか?喜び?悲しみ?
僕には分からないけど、でも、奇跡は起きた。ある一人の青年が起こした。

彼は、地味でさえなくて、そしてがらくたをずっと集めては並べて
いて、それはきっと、みんなの目の前にあるすばらしいこと、を拾い集めて
いたんだろうな、と思う。
あなたの生き方は他の誰も見ていなかったけど自分は確かに見ていたよ!
それはほんとうにすばらしい生き方だよ!!
と叫びたくなる。

毎日の中で写真を撮っていることも、それが誰かの目に留まることも、
伝えたかったことが伝わったときも、そのどれもが素晴らしいことで、
それはまさに奇跡なんだろうな、と思います。
これからも、彼のように、誰も気づかないようなすばらしいものを
拾い集められたらいいな、と思います。